Fight! 闘え。(前編)
今更ですが、無事日本に戻って来ました。
現在夏休み中、近眼進行中(2年前に比べて8段階も視力が落ちたので、行きつけの眼鏡屋さんにかなり心配された)、和食生活謳歌中、金欠中(短期、単発アルバイト絶賛募集中)、猛暑で頭痛悪化中の私です(猛暑って言っても、まだ6月。信じられん)。おはようございます。
帰国するまでに、これまた色んなハプニングが起こりましたよ。さすが私。何時でもただでは済まされない運命なんですね。ははは。
頼む、もう少し穏やかな人生を送らせてくれ。ハタチ超えてから、体がもたないんだわ。何かハプニングが起きても、瞬時に溌剌とした反応ができないんだわ。
ちなみに、今回はどのようなハプニングが起きたかというと、
・帰国する日の朝に寮の荷物を全てSelf-storage (トランクルーム)に移動しなければならないので事前にタクシーを予約していたが、そのタクシーの運転手さんと電話越しで大ゲンカしてしまう
なぜケンカになったかというと、、、
私が荷物を寮のエントランスまで運んでいる最中に運転手さんから待ち合わせ場所を確認する連絡が入る。
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私、とにかく電話を早く終わらせて荷物を運び終えたい。「とりあえず、寮の正面まで来て欲しい」と簡潔に告げる。(ここできちんと待ち合わせ場所を説明しなかったこと、今では反省してる)
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運転手さん、寮の裏口(駐車場)を正面と勘違いする。
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運転手さんから「今どこにいるんだ」と少しキレ気味に電話がかかってくる。運転手さんが寮の裏口にいると理解した私は、反対側まで移動するようにお願いする。しかし運転手さん、駐車場は他の車でいっぱいで簡単に出れそうにないから、君が裏まで来て欲しいと私の要望を拒否。(この日は寮の住人全員にとっての退去日だったので、他の生徒さんの引越しを手伝いにきた保護者の車もたくさん来ていた)
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私も、台車が壊れてしまっては(そう、荷物が多すぎて台車が壊れた)大量の荷物を裏口まで運ぶことが出来ないと断固運転手さんの要望を拒否。それから20分くらい電話口で、お前が来い、いや、お前の方がこっちに来いの醜い争いを繰り広げる。
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運転手さん、ついに完全にキレる。「このままだと次のお客さんとの待ち合わせに遅れるから、もう君の予約はキャンセルにする」と言って一方的に電話を切る。私、「いや、待って。こっちは既にお金払ってるし、今どうしても荷物を運ぶための車が必要なんだよ! じゃないと、飛行機に遅れる! 見捨てないで!」と焦る。でもここで弱気になったら負けだと思って、とりあえずタクシーを予約した会社に「運転手が勝手に予約キャンセルだなんて、信じられない!」と強気に連絡を入れる。
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運転手さんから連絡が来る。「もうキャンセルにするって言っただろ」と非常に迷惑そうな声。私、最後の望みをかけて情に訴える。「私、今日中に自分の国に戻らなきゃいけないの。その為には、荷物を運ぶための車が必要なの。今まで散々強気なこと言っちゃったけど、お願い、あなたに親切心があるなら戻って来て」
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「......今からそっち行くから」
運転手さん、戻って来てくれました。
そうです、本当はいい人なんです。
私の荷物の量に「多すぎる! こんなの仕事の内容外だ、あんまりだ!」と文句をつけつつも全て車内に運び入れてくれた運転手さんに何だか申し訳なくなって、「あの、次のお客さんとの待ち合わせに私のせいで遅れそうなら、本当にごめんなさい。もう10ポンド払います」と財布を取り出すも......くそう、現金がない!
「その、カード払いって出来ますか? 今すぐ払いたいんですけど」
電話越しでは丁寧語なんて使わなかったくせに、車内で急に礼儀正しくなる私。運転手さん、「もういいよ」と面倒臭そうに一言。
あ、私と会話するのは10ポンドを逃すことよりも嫌な感じですか。okです、今から石のように沈黙します。
もう自分には謝る術がないんだと諦めて、私が俯くと
「君、学生?」
運転手さんが尋ねてきました。
「え、はい」
「この荷物の量、すごいね。どうして今日、帰国するの?」
「えと、今日は寮の退去日で、だから、これ以上荷物を部屋に置いておけなくて。荷物、なるべく減らそうとしたんだけど、でも、9月にまたここに戻って生活するから捨てられないものが多くて、こんな量に......。本当にごめんなさい」
で、ここで私はまたやってしまった。
涙が女の武器だと言う人もいますが、私はもはや凶器だと思っています。
だって、涙は「泣かせた側」の人権を一瞬にして消滅させるから。
「自分が悪かった。君はまだ学生で、しかも留学生なのに。君は何も悪くないから、もう泣かないで」
ね。
もう運転手さんが圧倒的に不利な状況になってしまった。
あ〜、もう。なんですぐ泣くんだよ。
自分への苛立ちを募らせてみるも、涙が一向に止まらない。
私のしゃくり上げたり鼻をすする音と運転手さんの「スマイル! 泣かないで、笑って〜!」という懇願の声が車内で混ざり合っていたこの時のことを思い返す度に、「頼むから、もう人前で泣かないでくれ」と自分を叱責したくなる私です。
私が泣き止んだ頃、運転手さんはカーナビとして使っている自分のスマートフォンの画面の端っこを指差して言いました。
「ほら、ここ見て。これが今日の私のお客さんの数。で、次のお客さんとの待ち合わせ時間がこれ。45分までにこの場所に着いて、このお客さんを空港まで送らなきゃいけないんだ。もし私が遅れたら、このお客さんはフライトに間に合わないかもしれない。私が時間を気にして君にイライラしてたのは、こういうこと。あ、もうこれ以上謝らなくて大丈夫だから。(もう一度謝ろうと口を開きかけた私を手で制す)君はこの仕事のシステムを知らなかったんだから、仕方ないよ。ただ、これからは私達ドライバーのこと、理解してくれる?」
そうなんです。
私とのトラブルのせいで、運転手さんが次のお客さんを定刻通りに空港まで送ることができないかもしれないんです。
やっぱり自分の考えはまだまだ甘いんだと深く反省。
self-storage のお店周辺まで来たところで、「あの、私、ここで降ります」と店のエントランスを見つけようと必死になっている運転手さんの肩を叩きました。
「え、でも、エントランスはまだ......」
「大丈夫。エントランスは自分で見つけられるから。それより早く、次のお客さんのところに行って」
その後も運転手さんは数分ほど「いや、エントランス...」と私の降車に反対していましたが、最後には「分かった、ありがとう」と納得して私の荷物を全て下ろして道端に丁寧に並べてくれました。
「もしまたタクシーが必要になったら、いつでも私の番号に連絡して」
「うん、ありがとう。あの、これあげる」
10ポンドに比べたらだいぶ価値が下がりますが、最後にキットカットを運転手さんのポケットの中に押し込みました。
運転手さんを見送って、さあ、ここは一体何処だ、と改めて辺りを見回すと、見えてきました。いま自分がいる場所がself-storgeではなく、ライブスタジオだということが。
周辺にライブ用の機材を積んだトラックが沢山停まっていたので、私も運転手さんもてっきりここがself-storageのお店であると勘違いしてしまったんですね。
じゃあ、肝心のself-storageは何処なんだとiPhoneで調べてみると、なるほど、現在地から徒歩3分、目の前の坂を登ってすぐのところが所在地とのこと。
坂、登るのかあ......
ちょっと、いや、かなりキツいな〜と溜息をつく。
3分といえど、キッチン用具や寝具を詰めた引越し用の鞄と帰国用の荷物を詰めた空港で預ける用のスーツケース、これら全てを一人で坂の上まで運ぶのは容易なことではありません。
あいにく、私には手が二つしかないので数回に分けて荷物をself-storageのお店まで運ぶしかない。はあ〜、だるっ。
いや、元気出せ!坂を3往復くらいした頃には私、たぶん1.5㎏くらい痩せてるって! ははは! と年頃の女の子らしい発想でなんとかモチベーションを上げて「オッシャー!」と一番大きなスーツケースから運び始めたものの
うわっ、重っ。
しかも、こういう日に限って安定のどんより曇り空が国宝のようなロンドンがガンガンに晴れているんですよね〜。もう、なんで〜。
お陰で坂を登りきった頃には、喉は気持ちが悪いほどに渇き、着ているシャツはもう汗でベトベト。
もう、これ終わったらシェイクでも買って飲もう。うん。
坂を登った後はスーツケースをself-storageの店内まで運び、お店の人に「外にまだ荷物があって運ばなきゃいけないから、それまでちょっとこれ、見といて下さい」とお願いして
さあ、2回戦! 次はどれを運ぼうか〜?
と威勢良く残された荷物達の元へと駆け戻って、ん? 急停止。
1、2、3、4、5
目の前の鞄とスーツケースの数を数える。
...あれ、足りない
今度は思考停止。
黒の、
ペンギンのシールを貼った、
空港に預けようとしていた、
お土産やら服やら本やらアクセサリーやらを入れてた、
私が坂を登る前にはそこにあったはずのスーツケースが、
な〜い!
そう、これがハプニングその2
・人生2回目の盗難に遭った
あ〜、マジか〜。ここで盗難に遭うか〜。私、ツイてんな〜。
ついに頭が壊れました。
いや、元からか。
一番見た目が軽そうで高そうなスーツケースだけ、忽然と姿を消したんですね。
もちろん、盗難の懸念があったので常に肌身離さず背負っているリュックサック以外の鞄にはパスポートやパソコンなどの貴重品は入れてなかったわけなんですが、
でも、でも、でも!
お土産も服も本も、みんな、私にとっては貴重品なんです。
だって、どれも「来月、お給料が入ったら買いに行こう」とか「この美術館のこれなら日本の友達、喜んでくれるかなあ」って綿密に計画した上で手に入れたものなんだもの。ゴミじゃないんだわ。
幸い、タクシー内で出し切ったので涙の流出は起こりませんでしたが、心は痛い。ついでに、腕も脚も痛い。(それはただの筋肉痛)
もうこんな心痛な経験はしたくないから、私は複数の荷物を一人で一気に運べるくらいムッキムキのマッチョで、盗難に遭っても「あ、それは、新手の寄付ですのよ。ほほほ」と軽やかに笑えるほどのリッチで、ついでに何事も忘れさせてくれるような愛くるしい猫達に囲まれて暮らしているような幸せ者になりたい。
そうなるためにも、
精進しないとな。
では、
後編に続く!
(スクリーンを長時間見ると頭痛と視力の低下が悪化するので、今日はもうこれ以上書けないんです。ど近眼なんです。ご了承ください)