Teenageを終えて、手に入れたもの。
ジブリ作品、好きですか?
例に漏れず、私も幼いころから大のジブリファンです。
千と千尋の神隠し、もののけ姫、天空の城ラピュタ、風の谷のナウシカ……
一番好きな作品はなに? と聞かれて、即答できるわけがない。
一番なんてないの。こういうものには、順位なんてつけちゃいけないんです。
(というようなことを「魔女の宅急便」と即答した母に説教したら、軽やかに無視された)
けれど、そんな私にも唯一心から楽しめなかったジブリ作品があって、それがこの
「おもひでぽろぽろ」なんです。
20代の女性が数日間の田舎暮らしを通して自分が小学五年生だった頃の日々を回想するというプロットは、一見するとシンプルで深く考察しなくてもすんなり理解できそうですが、実はこのひねりのなさが私が長年「おもひでぽろぽろ」の趣旨を汲み取れずにいた原因だったんです。
ハラハラするような事件も、癖のあるキャラクターも、心躍るようなロマンスもない話というのは、小学生だった頃の私にとってどうしても物足りない。
主人公タエ子の思い出の中で広田くんという男の子がタエ子に好意を寄せていることが発覚するという出来事はあったけれど、それが驚くほど短いシーンだったので「耳をすませば」みたいな展開を期待していた当時の私は「え、これだけ!? 二人が友達になったかどうかも分からないんですけど!? いじわる! その先を、もうちょっと教えてよ!」とロマンス要素を微塵も感じさせない結末に内心かなり不服でした。
でも今は、それくらいで丁度良いと思います。
広田くんはなぜ、タエ子のことが好きになったのか。広田くんを意識するようになってから、タエ子の生活は何か変わったのか。
そんなこと、本当はどうだって良いんです。
広田くんが勇気を出してタエ子に「雨の日と曇りの日と晴れと、どれが一番好き?」と直接話しかけて、タエ子の「曇り」という答えに「あ、おんなじだ」と嬉しそうにはにかんで、そんな広田くんを見てその日一日タエ子は雲の上を泳いでるみたいにふわふわした気持ちでいた、という純粋な2人の一連のやり取りさえ見れればもう充分です。
そうだよな。小学生の時って、好きな人と好きな天気が同じってだけで幸せになれるんだよな。それだけでいいんだよな。(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
......。
そうか!「おもひでぽろぽろ」をよく理解するためには、作品を鑑賞している私自身が「小学五年生」という時期を回想するのが必要な年齢にならないといけなかったんだ!
つまり、主人公のタエ子と同じ20代を経験していない10代の頃の私がこの話を共感できないのは至極当たり前のことだったんです。
「おもひでぽろぽろ」は、大人なって自由になれたと思ったのに、本当は小学五年生の頃と変わらず「大人から求められるいい子ちゃん」を演じ続けてしまうタエ子の心の葛藤を描いた話。
やっと理解できた。
いい子をやめようとすると、「私のこと忘れないで」って甘えん坊のタエ子ちゃんが寂しそうについてくるものだから、思わず立ち止まってしまうタエ子。
でも、タエ子ちゃんが追いつけるような速度で歩いていたら、今の彼女が行きたい場所には永遠にたどり着けないから。
だから最後に、タエ子はタエ子ちゃんを遠くに置いてゆく決意をするんです。
それはタエ子が自由になるためでもあり、タエ子ちゃんの日々を活かすためでもある。
「おもひでぽろぽろ」にここまで共感できる日がくるとは、夢にも思いませんでした。
10代を失って得たものの大きさにしみじみしている今日この頃です。